遺留分侵害額請求の消滅時効はいつまでか
1 遺留分侵害額請求の請求期限について
たとえば、母親が、長女に全財産を相続させるという遺言書を残していた場合、二女は、長女に対する遺留分侵害額請求を検討する必要があります。
しかし、遺留分侵害額請求には、請求期限があるため、いつまでも請求できるわけではないことに注意が必要です。
1つは時効期間で、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年」です。
また、1年以内に遺留分侵害額請求をしたとしても、金銭債権については5年で消滅時効にかかってしまうので、5年以内には訴訟提起などを行う必要があります。
もう1つは除斥期間で、「相続開始のときから10年」です。除斥期間が経過すると、遺留分侵害額請求は自動的に消滅してしまうので、注意が必要です。
2 遺留分侵害額請求権を行使する方法
遺留分侵害額請求権を時効にかけないための方法は、まずは「遺留分を請求する旨を相手に伝えること」です。
先程の例で言えば、二女が長女に対し、遺留分の請求をすれば、いったん時効の問題は解消されます。
遺留分侵害額請求の方法は、法律で決められているわけではなく、口頭で伝える、手紙で伝えるなどの形式も可能です。
しかし、「遺留分の請求をしたこと」について証拠を残しておくために、内容証明郵便を出しておくのが一般的です。
3 遺留分侵害額請求の行使から解決までの流れ
遺留分侵害額請求を行った後は、相手方との交渉が始まります。
たとえば、1000万円の遺留分を請求して、相手方が同意し、支払いもなされるのであれば、そこで無事に解決となります。
他方で、相手方が「300万円が適切だ」などと主張をしてきた場合には、引き続き交渉をして金額を決め、それでも決着がつかなければ、裁判手続きを進めることになります。
時効の関係でいうと、先に内容証明郵便を出しておいて、決着がつかなければ、金銭債権が消滅時効にかからないよう、5年以内に訴訟を提起するということになります。
しかし、そもそも内容証明郵便が相手方に届かない場合などもあり、時効の管理はリスクがあります。そこで、実務的には、1年以内に訴訟提起まで行うことが多いと思われます。
また、まだ時効にかからないといっても、あまり先に訴訟を提起するとなると、その間に相手方が財産を処分してしまうなどのリスクもあるため、やはり、早めに法的措置をとるのがよいでしょう。
遺留分侵害額請求をされたらどうすればよいか 相続放棄をご検討中の方