遺言についてお悩みの方へ

遺言書は、健康状態や財産、家族関係、立場、人生観などにより個人差がありますが、作成するならなるべく早めに作成するのがおすすめです。

というのは、思わぬ事故や病気で亡くなってしまうということは、誰にでも起こりうることだからです。

十分に元気で余裕のあるときに作成した方が、しっかりと準備ができ、不測の事態にも備えることができて、望ましいといえるでしょう。

再婚、定年退職、親の相続、ご自身の病気などがきっかけで検討されることも多いようです。

遺言書を作成するためには、遺言書を有効に作成するための遺言能力が必要です。

認知症が進んでしまうと、そもそも遺言書を作成することができなくなってしまいます。

遺言書を作成する時点で判断能力が低下していると、あとで遺言の無効を主張されるリスクも高くなります。

そのようなリスクを避けるためにも、早めに作成するのがよいでしょう。

遺言書を作成したとしても、状況が変わった場合、また書き換えたいと考えることもあるでしょう。

その場合には、何度でも書き換えることが可能です。

しかし、先の遺言書との関係が複雑にならないよう、撤回や変更を明確にすることが必要でしょう。

よく問題となるのは、亡くなった方に子がおらず、配偶者と亡くなった方の兄弟が相続人となる場合です。

このような場合、配偶者がすべて財産を取得できるように遺言書を作成しておきたいと、早いタイミングで検討される方が多いようです。

また、亡くなった方の後妻と、先妻の子が相続人となるようなケースでも、早めに遺言書を作成しておく方が多いです。

そのほか、亡くなった方に相続人がいないような場合には、遺言書を作成しておかなければ、最終的には相続財産は国庫に帰属することとなってしまいます。

せっかくご自身で築いた財産について、ご自身の意思を残すためにも、やはり早めに遺言書を作成しておくとよいでしょう。

遺言の大きな役割の１つに、「家族の揉め事を防ぐ」というものがあります。

しかし、実際は遺言を巡る裁判は数多くあります。

なぜ、遺言があるのに、裁判が必要になるのでしょうか。

その理由は、「どのような遺言であれば、裁判が起きにくくなるのか」という観点から、遺言を作成しなかったという点にあります。

つまり、どのような遺言が残された場合に、どういった裁判が起こりうるのかを把握した上で、防止策を検討しなければ、遺言があっても裁判になること自体を防ぐのは難しいのです。

そこで、遺言の作成をする際は、実際に遺言に関する裁判を扱い、どういった遺言が裁判になりやすいのかを把握している弁護士に相談することが大切です。

遺言を作成する際は、相続税という観点を忘れてはいけません。

遺言には、誰にどのような遺産を受け継いでもらうかを記載することになりますが、誰がどの財産を受け継ぐかによって、相続税が大きく変わってきます。

例えば、夫が、遺産の大部分を妻に相続させることにしたとします。

配偶者が遺産を相続すれば、非常に多くのケースで相続税を０円にすることが可能です。

他方で、妻に遺産を集中させた場合、妻が亡くなった際の相続税は一気に跳ね上がることがあります。

遺言を作成する際は、これらのバランスを考えながら、遺言の内容を検討しなければなりません。

遺言は、ご本人が亡くなって初めて効力が生じます。

つまり、遺言を作成する際は、遺言作成そのものより、亡くなった後のフォローの方が大切です。

遺言者が亡くなった後は、遺言に従い、不動産の名義変更をしたり、預貯金の解約手続きをしたりすることはもちろん、相続税申告の手配も行ったりしなければなりません。

しかし、遺言作成に関わった弁護士が、個人事務所の場合、遺言者が亡くなったときに、その弁護士がまだ現役で業務をしているとは限りません。

その観点からいうと、遺言作成は、個人事務所ではなく、複数の弁護士が所属している法人の事務所に対して依頼する方がよいということになります。

また、相続後に色々な専門家の事務所を訪問するより、１つの事務所ですべての手続きができた方が、相続人の負担も少なくなります。

そのため、遺言作成の相談をする際は、その事務所が相続手続きや相続税申告など、相続に関する業務全般を扱えるかどうかを確認する必要があります。

このように、遺言を残すにあたっては、亡くなった後のフォローが万全かどうかをチェックすることも重要です。

遺言は、遺言者が亡くなって初めて効力が発生します。

しかし、遺言の効力が発生するといっても、実際に、遺言のとおりに財産を分ける作業が必要になります。

この作業をする人を、遺言執行者といいます。

通常、遺言を作成する際は、あらかじめその中で遺言執行者を指定しておくことが多いですが、仮に遺言執行者の指定がない場合は、裁判所に遺言執行者を選んでもらうことになります。

参考リンク：裁判所・遺言執行者の選任

遺言執行者は、様々な義務を負うことになります。

まず、過去の戸籍を読み解き、相続人の人数を確定させた上で、相続人全員に「遺言執行者就任の通知」を送ります。

さらに、遺産の調査を行い、財産の一覧表や、遺言書の写しを相続人に送った上で、預貯金の解約や不動産の名義変更を行わなければなりません。

これらの業務を正当な理由なく遅らせたり、適切な処理ができなかったりした場合、損害賠償責任を負う可能性があります。

遺言執行者になるにあたって資格は必要ありませんが、このような責任を負うということもあり、実際は、資格を持った専門家が遺言執行者になることが多いといえます。

遺言執行をする上では、裁判を行うこともあります。

もし弁護士以外が遺言執行者になった場合、裁判をすることになれば、結局弁護士に依頼しなければならなくなるケースが多いため、余計に費用が掛かる場合があります。

もし、遺言執行者が弁護士であれば、その弁護士がそのまま裁判に対応することができ、余計な費用は必要ありません。

仮に、弁護士個人を遺言執行者に指定すると、遺言者が亡くなった時、その弁護士が高齢や病気のために遺言執行ができなかったり、場合によっては遺言者よりも弁護士が先に亡くなっていたりするようなケースもありえます。

しかし、弁護士法人を遺言執行者に指定しておけば、遺言作成時の担当弁護士に万が一のことがあっても、同じ弁護士法人の別の弁護士が、遺言執行業務を行うことができます。